2025年10月
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食生活の改善がもたらしたある女性の髪の変化
これは、私のクリニックに通われていたA子さん(40代)の物語です。彼女が初めて相談に来られた時、その表情は暗く、頭頂部の分け目が広くなっていることを大変気にされていました。お話を伺うと、仕事が忙しく、食事は外食やインスタント食品で済ませることがほとんど。典型的な栄養不足と、それに伴う頭皮環境の悪化が薄毛の原因であることは明らかでした。私は治療薬の処方と同時に、まず食生活を徹底的に見直すことを強く提案しました。最初は戸惑っていたA子さんですが、本気で変わりたいという一心で、私の提案した栄養指導プログラムに取り組むことを決意しました。プログラムは、まず髪の主成分であるタンパク質を毎食必ず摂ることから始まります。朝は卵やヨーグルト、昼は鶏胸肉や魚、夜は豆腐や納豆。そして、血行促進を助けるビタミンEを多く含むナッツやアボカド、髪の成長に必要な亜鉛が豊富な牡蠣やレバーを意識的にメニューに加え、抗酸化作用のある緑黄色野菜をたっぷりと摂るよう指導しました。加工食品や甘いお菓子は、体を錆びつかせ血流を悪くする原因になるため、できる限り控えてもらいました。最初の1ヶ月は、自炊の習慣に慣れず苦労されたようですが、2ヶ月目に入る頃には、体の調子が良くなってきたことを実感し始めたと言います。そして3ヶ月目の診察の日、マイクロスコープで彼女の頭皮を見た私は目を見張りました。以前は弱々しく細かった毛が、根元からしっかりと太く、力強くなっていたのです。A子さん自身も「最近、髪にハリが出てきた気がするんです」と、以前とは比べ物にならないほど明るい笑顔で話してくれました。これは、体の内側から健やかになることが、いかに髪に良い影響を与えるかを示す、素晴らしい一例です。